前回の記事の続きで,第34回医学情報サービス研究大会(枚方)に参加して印象的だったことを追加。
口頭発表はほんとに申し訳ないくらいぽろぽろとしか聴けなかったのだけど,2日目最後のDのセッションは通しで聴けました。
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8月末の出来事なので今更なのですが。。
第34回医学情報サービス研究大会(通称MIS)に参加してきました。
地元枚方の開催だったのと,なんと託児があるがあるというので,子どもをつれて。
枚方市立中央図書館の方が最初のあいさつをされたときに,枚方市内の図書館の紹介もあって,懐かしかったです。
記念公演は諏訪さん。
長い間生命科学図書館のレファレンスをされて培われた知識と技能,データベースをやみくもに引くのではなく,データベースに格納されたデータの全体像をとらえつつ自らの研究の文脈と照らし合わせていく,という手法,そういったものがたくさん詰まっていました。
検索のときに半分以上の時間は検索式を組み立てる試行錯誤だというのが印象的でした。本当に適切なものを適切に引っ張り出すのは,データベースの全データを見ることができない以上,至難の業ですが,それでも「できないことではない」。
久しぶりでお話を伺えてよかったです。ちょっと喝が入りました。
その他の口頭発表はいくつか時間をみながら,託児室と会場を行き来しながらという感じで。
2日目の「研究データ管理のためのオンライン教材について」も聞きました。
gaccoの教材の紹介が中心でした。
研究データと一概に言っても,論文と違ってかなり分野によってその中身や取り扱い方が異なるもののはず。で,ドイツでは分野ごとのガイドラインを作っているという話も3月(前エントリ)に聞いたので,
そういうガイドライン作成の方向も検討しているのかと質問しました。
頂いた答えは,
それぞれの分野の人々が中でガイドラインを検討していけるように,材料というか知識を提供していく。
ということで,やっと気づいたのですが,図書館員はまずは,データもアーカイブ・オープンアクセスにもっていく時代になっている,そして具体的にはどういったものがそれぞれの分野で該当するのか考えよう,ということを研究者や周りの人に伝えていく,一種の伝道的な役割を果たすべきなんだと。
他人事でなく,自分自身がそのポジションにいるということですね。
そういうわけでようやく,受講登録をしました。
講義は11月15日開始です。
gacco自体が実は受講初めてで(前にgaccoもテーマに例会やってたのですが汗)ついていけるかわかりませんが,頑張ってみましょう。
この講義のトップページに,参考情報もたくさん載っているので,
これを読むだけでもだいぶ輪郭がわかってきそうです。
3/4は大図研近畿3グループの合同例会「海外と日本の動向から見直す~オープンアクセス・オープンサイエンスと私の関係」でした。
前半,
坂本拓さん(京都地域グループ)から,ドイツのオープンデータポリシーについての報告。
ドイツでは1998年にすでに,研究過程で生じたデータの「保存」に関する推奨の文書がでており,2010年に,データの保存とオープン化に関するポリシーが出され,それをベースに各大学が自機関のポリシーを作成しつつあると。
また,DFGが助成研究についてのデータのオープン化のポリシーをだしているそうで,それを実現するための様々な取り組みが面白かった。中でも,データは特に分野によって種類も扱い(慣習)も大きく異なるため,分野ごとのガイドラインを作成中という点は興味深い。
花崎佳代子さん(兵庫地域グループ)から,イギリスでオープンアクセスを実現するためのフローと,フローに沿ったjiscの様々な支援ツールや仕組み,2つの大学のオープンアクセスに関する具体的な状況や取り組み。
HEFCEがオープンアクセス義務化のポリシーを出したことが,かなりの影響を及ぼしていること,CRIS(研究業績データベース)がますます重要なツールになっていることがよくわかった。あと,実務担当者はやっぱり泥臭い部分をコツコツ手作業でやりながらの実現であることも。
CRISってなんか大学の研究プロセスにかかるあらゆるデータを引き受けている感で,ちょっと恐い感じもする。CRISにAIを搭載したらそれが大学の研究をコントロールして乗っ取ってしまう…みたいなSFが書けるんじゃないか。
「オープンアクセスと私の関係」ということで,義務化も国全体の枠組みもまだぼんやりしている日本では,コミュニティに焦点を当て,私からは,「機関リポジトリ」初期〜今までのリポジトリコミュニティの話をざっくりと。
CSIという,プロジェクト公募型の資金があり,「機関リポジトリとはなにか」という根本的な問いから学内でのアドヴォカシーやプロモートをどうするかを議論する,顔の見える関係,実務者同士の自由な議論が立ち上げ期を支えてきたという話。そして,インフラも進化していくので,個別に「正しい」ことを学んで実践するのでは追いつかず,むしろ自分たちの都合の良いように進化させて行くことができるのだ,それは人で支えていかなければならない,みたいなことを言いました。
加川みどりさん(兵庫地域グループ)からは,これからのリポジトリコミュニティのお話。加川さんのいらっしゃる神戸松蔭女子学院大は,クラウドリポジトリJAIRO Cloud 利用第1号です。兵庫で共同リポジトリを作ろうと研修会をしたらJAIRO Cloudができるという話で,じゃあそっちに乗っかろうじゃないかということで舵を切って来られました。JC参加館はどんどん増えて,今や一大コミュニティができるほどに。それが今年度,機関リポジトリ推進委員会,DRFと一緒になって,大きなJPCOARという枠組みになって船出しました。小さな機関ほど声を上げるメリットがある,いろんなことを言いあって良いものにしていきましょうとの声かけ。
後半はディスカッションでフロアからの様々な質問や意見受けながらの時間でした。
どちらかというと,研究系,国立大系の質問が多くてそっち寄りの話にはなってしまいましたが,リポジトリにとどまらず,ドイツが某大手学術出版社と揉めてる話とか,その条件の中にグリーンオープンアクセスの条件をもっとよくしろという内容が入ってるとか,やっぱり研究者とどれだけ接近できるか,一緒にできることを考えなければ,とか,学内でどんなことを誰がやっているのか知ろう,とか,publishの重要性は変わらないので,それをどう拾っていけるか,とか,興味深い話題が出たと思います。
で,メタデータスキーマがjunii2からjpcoarに変わるらしく,その案が提案されていて,意見を3/24(金)まで募集中とのことで,皆さん意見を出しましょう!だそうです。かなり細かいのでじっくり読んだ方がよさそうだけど…時間があったら読む会とかやったほうがええんではないかな…。「メタデータ⭐️ナイト」各地版,みたいな。
当日はクローズでしたがust中継もあり,遠くフランスから視聴くださった方もいて面白い試みであったと思います。兵庫地域グループの方ありがとうございました。
《追記》
なお,この会の詳細なレポートについては,『大学図書館問題研究会誌』第43号(2017.8)に掲載されました。(宣伝